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Q&Aコーナー

在校生の皆さまからお便りいただいた質問にお答えしていきます!

Q1: 有機化合物について(?)

 多くの参考書等で、「脂肪族炭化水素」の項目のところで、シクロアルカンなどの環式の物質が紹介されているのは何故なんでしょうか。

(received: 2020/5/26)

A1

 遅ればせながら、質問ありがとうございます!

​ 久々に高校化学の参考書を読んでみましたが、確かにシクロヘキサンをはじめ、環状の物質についても多く記載がありますね。

 まず、「脂肪族炭化水素」と対になる概念は「芳香族炭化水素」で、ベンゼンやナフタレンなどの特徴的な反応性を示す化合物が該当します。

「芳香族炭化水素」の条件は

① 環式炭化水素のうち、単結合と二重結合が交互に存在すること(共役二重結合)。

② 環を構成する炭素(正確にはπ電子)の数が(4n+2)個(n=0, 1, 2, …)であること。

です(ヒュッケル則)。シクロアルカンは①を満たさないので、「脂肪族炭化水素」になります。

 シクロアルカンは分子式ではCnH2nでアルケンと同じですが、単結合のみで構成されているので、反応性はアルカンとほぼ同じ(反応性が低い)です。そのために同じ括りで紹介されています。

 同様に、シクロアルケンやシクロアルキンはそれぞれアルケン、アルキンと同じような性質を示します。環状になっていることによる反応性の変化はあまりありません。(3員環では無理な角度で結合していることによるひずみがあるので、その限りではありませんが)

 さて、反応性に乏しいシクロアルカンですが、教科書の限られた紙面で紹介しているのには以下のような意味があるのではないかと思います。

① 舟形/いす形の立体配座をとったり、置換基にアキシアル/エクアトリアルの異性体が生じたりするので、より複雑な環状化合物(糖類など)を理解する上で重要な点
② (シクロヘキサンについて)アジピン酸やヘキサメチレンジアミン、ε-カプロラクタムなどの工業原料として重要な点
 

 また、大学の実験室などでは直鎖アルカンよりもさらに極性の低い溶媒としての用途もあるほか、より多くの炭素からなる中員環・大員環を持つ化合物には、抗生物質や香料などに含まれるものも多く、結構奥の深い世界ですよ。

 ややもすると暗記ばかりになりがちな有機化学ですが、現象の理由や疑問点を考えていくことこそが大切なのではないかと思います。ぜひ楽しみながら勉強して、また疑問点があったらお気軽に質問してください!

(answered: 2020.5.30)

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